【重要】厚生労働省がスポットワーク利用企業に周知!見落としがちな法的留意点
近年、短時間・単発の業務を雇用契約に基づき行う「スポットワーク」が急速に普及しています。利便性が高い一方で、スポットワーク利用時における労務トラブルも増加傾向にあります。
この状況を受け、厚生労働省は一般社団法人スポットワーク協会と連携し、事業主が特に留意すべき事項をまとめたリーフレットを公表しました。
本記事では、このリーフレットの内容に基づき、スポットワーク利用企業が知っておくべき法的留意点を解説します。
1. スポットワークの現状とトラブルの多さ
スポットワークは、アプリなどの仲介事業者を利用し、事業主とスポットワーカー双方にとって、手間をかけずに労働力を確保・提供できるメリットがあります。
しかし、今年1月に公表された調査では、スポットワークで働く人の半数近く(46.8%)が何らかのトラブルを経験していることが明らかになりました。
主なトラブル内容としては、「仕事内容が求人情報と違った」(19.2%)、「業務に関して十分な指示や教育がなかった」(17.7%)、「労働条件(賃金や労働時間等)が求人情報と違った」(16.5%)などが上位を占めています。
企業側がこれらのトラブルを回避し、法令を遵守するために、以下の点に留意することが必要です。
2. 労働契約の成立と「キャンセル」の取り扱い
労働契約成立のタイミング
スポットワークの労働契約は、原則として、事業主が掲載した求人にスポットワーカーが応募し、面接などを経て、短時間の就業を承諾しマッチングが完了した時点で成立すると考えられます。
契約成立後のキャンセル(解除)
労働契約成立後、事業主が一方的に契約を解除することは、労働契約法第3条第1項の「信義誠実の原則」の趣旨を踏まえ、スポットワーカーにとって不利益となるため、避けるべき行為です。
やむを得ず解除が必要となる場合に備え、あらかじめ「解約権留保付労働契約」を締結し、その解除が合理的なものである場合にのみ許容されます。
【使用者側から解除可能な主な事由の例】
• 不可抗力で業務が実施できなくなった場合(地震や台風などの天災事変等)
• 遅刻、欠勤などにより、スポットワーカー側に過失がある場合
• 募集条件を満たさない場合(服装・髪型などの規定違反を含む)
• 労働基準法等に違反する行為や、犯罪行為等の反社会的行為を行った場合
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【なわ社労士のポイント!】
使用者の責めに帰すべき事由で契約が解除された場合、企業は労働者に対し、休業手当(平均賃金の6割)の支払いを求められることがあります。スポットワークであっても、正社員や長期アルバイトと同様に、安易なキャンセルは休業補償リスクを伴うことを認識し、契約成立の判断は慎重に行うべきです。
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3. 予定と異なる労働時間の確認・修正義務
スポットワークでは、当初の予定と実労働時間に差が生じることがあります。賃金支払いの根拠を明確にするため、事業主は以下の点に注意しなければなりません。
1. 実労働時間の確認と修正:
予定と実際の労働時間にずれが生じた場合、その場で確認・修正を行い、支払う賃金を確定する必要があります。
2. 準備・後始末の時間算定:
業務の開始前後に必要な準備行為(制服の着替え、受領など)や、業務終了後の後始末(掃除、簡単な報告書作成など)についても、労働時間として算定し、賃金を支払う必要があります。
これらの時間は労働時間として取り扱い、賃金を支払わなければなりません。
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【なわ社労士のポイント!】
労働時間のカウントは、労働者が使用者の指揮命令下に置かれているかで判断されます。業務に必須の準備や片付けを義務付けている場合、その時間がたとえ数分であっても労働時間として取り扱い、未払い賃金が発生しないよう徹底して管理する必要があります。
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4. 社会保険加入要否の判断(合算の注意点)
スポットワークで働く労働者についても、雇用保険、健康保険、厚生年金保険などの社会保険加入の要否を判断する必要があります。
特に注意が必要なのは、スポットワーカーが複数のスポットワーク仲介業者を利用している可能性がある点です。社会保険の被保険者要件を満たしているかを判断する際には、全てのスポットワークでの労働時間や勤務日数を合算して確認することが求められます。
スポットワークだからといって社会保険の適用が除外されるわけではないため、労働者ごとの勤務実態を正確に把握し、法令に基づいた適切な手続きを行う必要があります。
まとめ
スポットワークは企業の柔軟な働き方を支える重要な手段ですが、企業には労働基準関係法令を遵守する義務が伴います。労働契約の成立時期、キャンセル時のリスク、労働時間の適切な算定、そして社会保険加入要件の合算判断など、特に短期雇用特有の留意点を理解し、適切な労務管理を行うことが、企業の信用とリスク回避に直結します。
法令遵守にご不安がある場合は、ぜひ社会保険労務士などの専門家にご相談ください。



