【2028年施行】従業員50名未満も対象!ストレスチェック完全義務化への実務対応と助成金活用術
【2028年施行】従業員50名未満も対象!
ストレスチェック完全義務化への実務対応と助成金活用術
執筆:なわ社会保険労務士事務所
経営者・人事担当者の皆様、2028年4月より「ストレスチェックの実施」がすべての事業場で完全義務化されることをご存知でしょうか。
2025年5月の法改正により、これまで努力義務とされていた「従業員50名未満の事業場」においても、実施が法律で義務付けられることになりました。施行までまだ少し時間があるように思えるかもしれませんが、就業規則の改定や実施体制の整備には想像以上の時間がかかります。
本記事では、完全義務化の背景と、中小企業がスムーズに制度を導入するための具体的な5つのステップ、そしてコストを抑える助成金の活用術について、社会保険労務士が分かりやすく徹底解説します。
なぜ今、50名未満の企業にも義務化されるのか?
ストレスチェック制度は、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐ(一次予防)ことを目的として、2015年に従業員50名以上の事業場を対象に義務化されました。では、なぜ今回、50名未満の小規模事業場にも網が広げられたのでしょうか。
背景にある深刻な「労災」の実態
現在、精神障害を原因とする労災の決定件数は過去最多の883件を記録しており、働く人のメンタルヘルス不調は企業にとって見過ごせない経営課題となっています。
特に、これまで制度の対象外であった小規模事業場においてメンタルヘルス対策の遅れが顕著であり、すべての働く人の心身の健康を守るために今回の法改正が行われました。
従業員のメンタルヘルス不調は、長期の休職や突然の離職による人手不足、残された社員へのしわ寄せによる生産性の低下に直結します。ストレスチェックの実施は、単なる「法律への対応(やらされ業務)」ではなく、「離職を防ぎ、企業を強くするための健康経営投資」と捉えることが非常に重要です。
【完全保存版】50名未満の企業がやるべき5つのステップ
義務化に向けて、企業は単にアンケートを配ればよいわけではありません。以下の手順で計画的に準備を進める必要があります。
1現状把握と対象者の確認
まずは事業場(店舗や営業所)ごとの正確な労働者数を把握します。パートやアルバイトであっても、一定の要件(週の労働時間が正社員の4分の3以上など)を満たす場合は実施対象となります。
また、現行の就業規則にメンタルヘルスや休職に関する規定、健康診断に関する規定がどのように記載されているかを確認し、現状のルールを洗い出します。
2実施体制の設計
ストレスチェックを「誰が主導して」「誰が評価するのか」を決めます。法律上、ストレスチェックの「実施者」は医師や保健師等の専門職に限られています(人事担当者などが実施者になることはできません)。
さらに、高ストレス者と判定され、面接を希望した従業員に対して「面接指導を担当する医師」をあらかじめ確保しておく必要があります。
3社内ルールの整備と就業規則の改定
実施方法、結果の保管方法、高ストレス者への対応フローを社内規程として定めます。ここで最も重要なのが「不利益な取り扱いの禁止」です。
「ストレスチェックの結果が悪いから」「面接指導を申し出たから」という理由で、解雇、配置転換、昇進での差別を行うことは法律で固く禁じられています。この旨を就業規則等に明記し、従業員へ周知する義務があります。
4社内への周知と実施・面接指導
いざ実施する際、従業員は「結果が会社にバレて評価が下がるのではないか」と不安を抱きます。プライバシーが厳格に守られること、不利益な取り扱いがないことを丁寧に説明し、受検を促します。
また、高ストレス者からの申し出があった場合は、速やかに医師による面接指導を実施し、医師の意見を聴取した上で、必要に応じて就業上の措置(残業制限や業務内容の変更など)を講じます。
5集団分析と職場環境の改善(PDCA)
テストをして終わりではありません。個人の結果とは別に、部署やチームごとのストレス要因を分析する「集団分析」を行います。
「業務量が多い部署はどこか」「上司の支援が足りない部署はどこか」を可視化し、業務フローの改善や人員配置の見直し、管理職へのラインケア研修などを実行します。そして次年度のチェックで効果を検証するというPDCAサイクルを回します。
小規模事業場が直面する「2つの壁」と解決策
中小企業が導入を進める際、特有の課題として以下の2点がよく挙げられます。
① プライバシー保護の壁(10人未満の部署)
集団分析は非常に有効ですが、部署の人数が10名未満の場合、結果から個人が特定されてしまう恐れがあります。そのため、原則として10名未満の単位での集団分析の実施には、対象者全員の同意が必要となるなど、法的に細心の注意が求められます。小規模企業では、部署単位ではなく会社全体で分析するなどの工夫が必要です。
② 実施コストの壁と「無料ツール」「助成金」の活用
外部の業者に委託したり、産業医がいない企業で面接指導のための医師を探したりすると、大きな費用がかかります。しかし、以下の方法でコストを大幅に抑えることが可能です。
- 厚生労働省の無料プログラム:厚労省が無料で提供している「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」を活用すれば、システムの導入費用を抑えられます。
- 地域産業保健センターの活用:従業員50名未満の事業場であれば、各地域にある「地域産業保健センター」を利用して、高ストレス者への医師による面接指導を無料で受けることができます(回数制限あり)。
- 助成金の活用:「団体経由産業保健活動推進助成金」などの公的な支援制度を利用することで、メンタルヘルス対策にかかる費用の負担を軽減できる場合があります。要件に合致するかどうか、専門家への確認をおすすめします。
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