事業展開等リスキリング支援コースの概要とポイント

制度の目的と概要

本制度は、企業が新規事業の立ち上げや業務のデジタル化・脱炭素化(DX/GX)に伴い必要となるスキルを従業員に習得させる訓練を計画・実施した場合に、その訓練費用や訓練期間中の賃金の一部を助成するものです。会社が従業員に新しい分野の専門知識・技能を身につけさせる「リスキリング(再技能取得)」を促進し、従業員のキャリア形成と企業の生産性向上につなげることが狙いです。令和4年度~8年度の期間限定の制度となっています。

誰が使える?(対象となる企業・従業員)

  • 対象となる企業(事業主):雇用保険適用事業所の事業主であることが必要です。また、事業主は研修担当者などを「職業能力開発推進者」として選任し、社内に職業能力開発計画を策定・周知していることが必要です。
  • 対象となる従業員(訓練受講者):申請事業主が設置する雇用保険適用事業所の雇用保険被保険者であることが必要です。つまり、会社に在籍している労働保険適用者が対象で、契約社員・パートも含まれます。

どんな訓練が対象?

  • 新分野に関わる訓練:事業展開やDX・GXに伴って新たに必要となる知識・技能を習得させる訓練が対象です。具体例として、製造業が全く新しい製品開発技術を学ぶ、サービス業がネット販売のノウハウを学ぶなどが挙げられます。
  • 職務関連訓練であること:訓練内容は、受講する社員の現実の職務に関連する専門的知識・技能の習得を目的としたもの(職務関連訓練)でなければなりません。例えば営業社員ならITツールの活用方法、技術職なら新技術の操作方法など、業務に直結する内容である必要があります。
  • 訓練時間などの条件:訓練は原則としてOFF-JT形式(集合研修やオンライン研修)で行い、かつ通算で10時間以上である必要があります。訓練はあらかじめ作成したカリキュラムに基づき、訓練開始の6か月~1か月前までに「職業訓練実施計画届」を提出して実施する必要があります。OJT(現場研修)を組み合わせる場合もありますが、最低限OFF-JTを実施することが要件です。

いくらもらえる?(助成金額・条件)

  • 訓練費用助成率:中小企業では訓練に要した経費の75%、大企業では60%が助成されます。例えば、会社が支払った研修費用が10万円なら、中小企業なら7万5千円が助成されます。
  • 賃金助成額:中小企業の場合、訓練を受ける社員1人あたり1時間当たり1,000円(大企業は500円)を助成します。訓練期間中も社員に賃金を支払い、その一部を国が支援するイメージです。
  • 支給条件:賃金助成は所定労働時間内に実施した訓練のみ対象となり、所定時間外(残業や休日)に行われた分は助成対象外です。また、訓練を予定の時間の8割以上受講しなければ助成を受けられません。出席率が80%未満の場合は支給されませんので、社員にはしっかり参加させる必要があります。

申請の流れと必要書類

  1. 計画届の提出:訓練開始の6か月前から1か月前までの間に、都道府県労働局へ「職業訓練実施計画届」を提出します。このとき、訓練の内容や期間、対象者などを記載します。※計画届の提出自体は受理のみで、支給審査は支給申請時に行われるため、提出しただけで確実に助成金がもらえるわけではありません。分からない点があれば管轄の労働局・ハローワークに早めに相談しましょう。
  2. 訓練実施:計画通りに訓練を実施し、訓練費用を会社が全額負担しつつ、訓練期間中も社員に賃金を支払います。訓練の受講記録や教材費、受験料などの領収書は後で必要になるので保存しておきます。
  3. 支給申請:訓練終了日翌日から起算して2か月以内に、労働局長へ支給申請を行います。主な申請書類には、支給申請書(様式第4-2号)、対象社員のリスト、訓練の受講状況を示す報告書や修了証の写し、訓練費の領収書、賃金台帳などがあります。また、経費助成・賃金助成の内訳(様式第5号・6号等)も提出します。電子申請も可能ですが、計画届を電子で提出していない場合は電子申請は不可なので注意してください。

活用例(実際の事例)

  • 和菓子店のDX研修:老舗の和菓子屋が新たにネット通販部門を立ち上げるため、サイト設計やWebマーケティング、顧客分析などを学ぶ研修を社員に受講させた例がありますmhlw.go.jp
  • ホテルの事業拡大訓練:ホテル経営が主な会社が、観光ツアー事業を始めるために、社員を大型自動車の運転免許取得訓練に参加させた例があります。
  • 製造業の新製品開発:カーナビ用フィルム製造業者が、新たにゲーム機向けフィルム開発に進出するため、専門講師を招いて開発ノウハウを学ぶ訓練を実施した例があります。

これらのように、会社の事業展開・DXの計画に沿った内容であれば、各業種での活用が考えられます。訓練内容が変化に対応するものであれば対象となる可能性があります。

よくある質問と注意点

  • 企業命令による訓練が対象:この制度では、原則として事業主が命じて実施する訓練のみが対象です。社員が自主的に受講しただけでは助成対象になりません。(例外として育児休業中の訓練は対象となる場合がありますが、それ以外は自発的訓練は対象外です。)
  • 提出書類・申請の留意点:計画届を提出しただけでは助成金が確実に支給されるわけではありません。申請内容に不備や要件漏れがないよう、支給申請時の審査まで内容を十分確認しましょう。不明点があれば早めに相談することが大切です。
  • 受講時間と出席率:訓練は所定労働時間内で実施した部分のみ賃金助成の対象となります。所定外(残業や休暇扱い)分は助成されないので、訓練時間は勤務時間内に設定しましょう。また、受講者は全体の8割以上の時間出席しなければ助成を受けられません。欠席が多いと助成金が不支給になる点に注意してください。
  • 助成金の返還義務:計画届に沿って訓練を実施したにも関わらず、後になって予定していた事業展開が行われなかった場合でも、原則として助成金を返還する必要はありません。あくまで訓練の実施自体が要件となっているため、事業展開の成否で助成金が左右されることはありません。
  • 他コースとの併給:このコースは他の「自主的職業能力開発訓練」などと同時に受給できません。たとえば事業主命令でない訓練に対する助成(自発的コース)とは併用不可です。訓練の性格がどのコースに該当するか事前に確認しておきましょう。

以上のポイントを押さえ、計画的に制度を活用することで、訓練費用を抑えつつ社員のスキルアップを図ることができます。制度の詳細要件は厚生労働省や各都道府県労働局のパンフレットで確認できるので、具体的な導入を検討する際はそちらも参照してください。